本日の布薩の日を通じて立正佼成会では、創立当初から布薩を体験説法や法座修行の中で実践してきました。本日の布薩の日を通じて私達は日頃の修行精進を顧み、感謝・感激・感動・サンゲ・請願をサンガの中で確認しあう日です。そのことが私達の自らの心田を耕すことであり、布教伝導への決意を新たにする事でもあります。
江戸時代の初めごろ、禅の教えをわかりやすい言葉で庶民に伝えた盤珪禅師(ばんけいぜんじ)は、あるとき、一人の僧が禅師にこう尋ねた。「私は生まれつき短気で、師匠からいくら意見されても治りません。どうすれば治るのでしょうか」 禅師は「では、今ここにその短気をお出しなさい。治してあげる」と穏やかに返すのですが、その言葉を受けて、僧が「いいえ、今はありません。何かの折にひょいと短気が出るのです」と答えるや、禅師は一喝します。「縁によってひょいと出るなら、それは生まれつきではなかろう。どの親も、子に生みつけたものは仏心ただ一つ。それ以外何も生みつけておらぬ。自分の思惑や身の贔屓(ひいき)で短気を出しておいて、それを生まれつきと言うそなたは難題を親にかぶせる大不孝者だ!」と。
こうゆう事はお互い様あるのです。だから、何事においても親は仏心しか植えつけていない。それを私たちは仏性と教えてもらっているのです。
本会では「親孝行」「先祖供養」「菩薩行」の三つを生活の実践の柱にしますが、仏心という尊い生命を授けてくださった親や先祖への感謝を大事にすることを、盤珪禅師の言葉から改めて学ばせて頂いています。また、親孝行というと、生命を繋いで下さったご恩に対して、私達に出来る一番の親孝行や先祖供養は、生まれつき授かっている仏心をよりよく働かせ、磨き、本来の輝きそのままに生きることに他ならないのです。それには何が大事かというと、三因仏性(正因仏性、了因仏性、縁因仏性)だと開祖様から教わっています。
正因仏性(すべての人が本来具えている仏性)、了因仏性(真理を知り、その真理に照らし合わせることによって、本来具えている仏性を了(さと)る智慧)、縁因仏性(仏性を育て上げる縁となる善行のこと)つまり良いことを縁として実行するとそれが仏性を磨き、親から授けてもらったその素晴らしい仏心を輝かせる基となる。菩薩行、布施行を真心からさせて頂いている間は良い事をしているので、自分の持っている仏性に大きな良い縁として影響を与えていくのです。つまり三因仏性が人格完成成仏に近づける一番大事な行です。